「麻桐ッ!」
鬼の形相で、イーヴィル・B・レインは社長椅子に優雅に腰掛けている男の前まで大股で歩いてくる。
彼のローファーが高らかに鳴っていた。
「何ですかイーヴィル」
一方、麻桐は笑顔を絶やさず、目の前の部下を見て聞いた。
恐らくこの緑髪の男は全てを知っていてなお、敢えて知らないふりをするという特技を持っているらしい。
イーヴィルは相手を睨み付けたまま、後ろの扉を指差して言う。
「あいつに変なこと吹き込んでんじゃねえぇーーーッッッ!!!」
彼の言う『あいつ』とは、最近彼が拾ってきたラビエール・ホワイトという少女のことである。
如何やら、その麻桐の入れ知恵の被害にあったようだ。
麻桐はしれっと言う。
「何のことやら、さっぱりですねぇ」
イーヴィルは口元を引き攣らせる。
「ほほ~う? じゃあアレか!? 今朝ラビが俺の耳やら首やらを囓って起こしてきたのも知らねぇってのか、ああ!?」
「おやおや」
麻桐は上品に口元を押さえて笑った。
「それはまた過激な起こし方ですね~」
「とぼけんなッ!」
部下に突っ込まれ、麻桐はやれやれと首を振った。
「貴方がいつもちゃんと起きずに、遅刻するから悪いんです」
イーヴィルはじとっと上司を見た。
「だからってあいつを寄越すんじゃねえよ。俺の理性を何だと思ってやがる。大体、てめぇの一言でいつも起きるじゃねえか麻桐」
「起きないと死にますよ、ですか?」
「あの一言で起きなきゃ、たぶん一生目ぇ覚めなくなるだろうからな…」
部下は遠い目をした。
如何やらこの紅い眼の彼は上司の恐ろしさを知っているらしい。
麻桐はニコニコした。
「貴方はあの一言で起きているつもりなのでしょうが、僕は毎日毎日その30分前から貴方に声を掛けカーテンを開け布団を没収し蹴りを入れ、………と、かなり労力を使ってやっと起こしているのですが?」
「まじか。全然記憶にねぇ…」
イーヴィルは頭をおさえて唸った。
悪いのはお互い様らしい。
「兎に角」と麻桐は言う。
「明日からちゃんと起きてくださいね」
ばさりと手渡された書類を受け取って、彼は頷く。
「ああ、悪かったよ。ちゃんと起きる」
「ラビにも頑張ってもらいますので」
「ハアァ!!??」
ぐしゃっと書類が不吉な音を立てた。
驚き過ぎて素頓狂な声をあげる部下に、麻桐はにーっこりした。
「イーヴィルも、頑張れますよねぇえ??」
さーっとイーヴィルの顔が青ざめていったとか、いないとか。
事後談1
(毎日あんなことされたら、俺の心臓が保たねぇ)
麻桐さんが天然なラビちゃんにイーヴィルさんの起こし方を吹き込んだ結果、出る被害(´∀`*)
ラビちゃんがどんな起こし方したのかはご想像にお任せします。
最近Requiem組の小話を書いてみたり。
あまり弄ると怜生様に申し訳ないので、小話を(・ω・;)
僕クオリティですみません怜生様。
そのうちオリ主の本編書きたいですね!
イタリア編始動(準備中)(・ω・;)
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